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巖谷國士★講義 第1回「新★ぜみ」の報告

まだ6月がはじまったばかりだというのに……快晴、青空、高温、多湿の東京から〜

全国のmont analogue ★ぜみ生のみなさまへ、本日6月2日、大学内某所にて、校友会を通じて「新★ぜみ」が始動いたしましたことを、ご報告申しあげます。

北海道をめぐる取材旅行と、札幌と小樽での講演を終えたばかりの★先生(みんなで1月にプレゼントしたアニエス・ベーのブラウスを着用)を囲み、世代もさまざま、★ぜみ卒業生のそれぞれが「待ってました!」の笑顔で、★先生のお話に耳を傾ける、ワクワクの3時間ーー。そこには、同調も忖度も拘束もない、参加者それぞれの「共通の場所」が生まれ、「シュルレアリスムであろうとする」★先生と、自在にくりひろげられるその語り口から、参加者の誰もが、いっそうの、自由な時間と空間を体得できたように思います。

そこで以下に、第1回「新★ぜみ」の報告に代えて、聴講者による講義の「概要」と参加者からの「感想」を一部、匿名にてご紹介させていただきます。

【概要】
 ★先生の北海道での講演レポートや連載エッセー「すばらしい北海道」(「開発こうほう」に連載中)に触発され、いてもたってもいられない私たちからの、熱烈リクエストに応えるかたちで、第1回「新★ぜみ」では、★先生に「北海道とは何か?」と題するお話を聞かせていただきました。

 ★先生が明らかにする、驚くべき北方民族圏。大陸~カムチャッカ~千島列島~アリューシャン~ベーリング海峡~アラスカまで、広大な範囲に渡って存在する北方民族があらゆる手段で往来をくりかえし、やがて北海道の森へとたどり着いて、そこを棲処としながらも、なお旅を続けて多様性と交じわり、沖縄まで航海をして日本列島における縄文人の祖になっていったこと。

 また北海道と本州とでは、植物相も動物相もぜんぜん異なるというのは日本人の誰もが実感するところですが、そうした生物相の分布境界線(ブラキストン線という)が、実際、最終氷期(約7万年~1万年前)のころに、津軽海峡を横切る深い溝となって、大陸移動の過程でできあがったのだ、とも。つまり地理的にも北海道は北方世界と地続きにあった大地なのですね。

 一方、本州列島を北へ北へと攻め上がってくる弥生文化も、海峡のおかげで北海道まで及ばなかったことや、近代以後も北海道人の社会や政治に対する意識は独自のものであることなど…するどく、さまざまな視点から指摘する★先生の話により、歴史〜文化〜自然のすべてがつながって、北海道という「国家」ではない「くに」の姿が浮かびあがってきます。

 世界水準と言える人口密度や面積、オホーツク遺跡や縄文遺跡、北海道出身の芸術家たち、瀧口さんにとっての北海道…なども展開され、私たちは北海道という「くに country」と各都市の魅力にいよいよ惹かれてゆきます。

 そこでこのたび、★先生がへめぐった北海道十勝の4つの庭園について…真鍋庭園、千年の森、十勝ヒルズ、紫竹ガーデン…それぞれに驚くべき姿を呈していて、すべてが多様性、まさに「これが日本か!?」。

 

 講義の終着点には、札幌のイサム・ノグチ設計によるモエレ沼公園にまで話がおよび…ノグチの失われた幼年時代の夢と記憶が、そのまま庭園作りに表現されているのだと★先生。世界中の遺跡をめぐり、世界人イサム・ノグチが、その生涯の最後に成し遂げたかったこととは、庭園という記憶装置のなかに、宇宙(世界)の縮図を置いてみたかったのではないか…とも。

 

 デザイナーや彫刻家として知られるイサム・ノグチの、夢見る子供(l’enfant qui rêve)となって庭園(自然界・楽園)を作る、記憶の表現をこころみる、その姿勢は、「これから記憶を確かめる作業をしてゆこうと考えている」と話す★先生の姿に重なります。

 

 ーーその記憶、ぜひまた私たちにもお聞かせください。こうしてふたたび講義を聴かせていただき、参加者である私たちが、★先生の記憶を追体験できる幸運を心からうれしく思っています。

 ★先生、ぜみを復活させてくださり、ありがとうございます!

 

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さてここからは第1回参加者のみなさんよりお寄せいただきました「感想」を一部ご紹介します。

 

【感想】
◉先生のお話には北海道にせよ、庭園にせよ、今まで見ていなかった、気づかなかった物事の本質、見知らぬ側面、隠された何か、いろいろなことにあふれていて、なんという聴く喜び! 学ぶ喜び! 何度でもこの時間に戻って来たい。先生のお話こそ宇宙の縮図の庭園のようなもの。日が暮れても帰らない子どものようにずっとそこで遊んでいたい。

◉先生のぜみに出席された皆々の紹介、それぞれの方々との心の交った先生の細やかな初対面からの記憶の鮮明な人物表現が素晴らしい講義冒頭でもありました。

近頃、より近年、旅らしいことから遠ざかっていた私には、どこの場所であっても新鮮なものであったに違いないのですが、「北海道の旅」は50年以上昔のことで、当時の北海道は、異国情緒というか、本州とあらゆる面が違う世界と思った記憶がありましたが、今日の講義に、そのことは、50年前ゆえのことではなく、「北海道」の成り立ち、むしろ動植物、民族的背景、などなど 旅は多様性の交流ということ、何もかもが「目からうろこ」のような新鮮なお話で、かつ庭園のとらえ方も…新しい視点から見る「見方」を学べました。

先生のぜみは、自分自身の今までの物事のとらえ方、見方、味わい方とは全く違った視点によるもので、自己の生き様をじっくり考える大変良い機会となりました。ありがとうございました。

◉人間の生きることに対する「国家の侵蝕」について日頃直結した仕事をしているのですが、その根底にあるものを改めて「つかんだ」という思いがしました。五つ星運動にもつながる、久々の霊的つながりを確認する時間でした。

◉北海道(と沖縄)をめぐる話、とても面白かったです。多様性のある庭園、どこも行ってみたい、「これが日本か」と言ってみたい。沖縄についてと同じような問題を北海道も抱えている、そういう視点で北海道を特別に捉えたことがなかったので、今後注目していきたいと思う。「全部つながっている」千島や樺太との連続性も興味しんしん。

◉先生の北海道の話が聞けて本当によかったです!やはり先生の旅は格別です。先生との旅、根源への旅、記憶の体験、アナロジーの展開、歴史、文化、自然の体験、★魅惑‼︎! 先生の旅や写真にまつわるお話などが聞きたいです。

◉北海道をめぐる土地の歴史、絵本、庭園…それぞれが、人間の「記憶」へとアナロジックに結びついてゆく。先生のお話は今日もたいへん鮮やかで、あっという間の3時間でした。今後もゲリラ的に自由に、多様な角度から世界を見る「共通の場所」が開かれてゆくことを切実に希望します!本日はどうもありがとうございました。

◉またやりたいです。ぜみがあるといいです。

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報告の最後に……

第1回につぐ、次回のmont analogue★事務局の主催する第2回「新★ぜみ」は、10月前半の日曜日を予定しています。また詳細が決まりましたら、随時ご案内してゆく所存です。

 

もちろん「10月まで待てない!」という★ぜみ生の方々も多くいらっしゃることでしょう。

 

そうした方々には、みずから★先生のほうに名乗りでていただき、ときに美術館や画廊、カフェやレストラン、森の中や旅先の町などに集まって、そのつど思いついたプランを実行したり、あるいは、とくに予定も立てずに、★先生の話を聴いたりするような偶発的・ゲリラ的・遊戯的に生まれる「小規模★ぜみ」を、たくさん重ねていってもらえたら……そしてこのHPの「ゲストブック」にさまざまご報告いただけましたら……幸です。