巖谷國士★講演「絵本とメルヘン」@明治学院大学明治学院大学白金キャンパス アートホール

絵本に感じるなつかしさとは何か。★先生は、人類が森を出てながいながい旅をし、ついに定着して農耕をはじめ、文明を営むようになった歴史までさかのぼります。
古代文明のレリーフやギルガメシュ叙事詩、ラスコーやアルタミラの洞窟絵画など、絵物語・・・絵本の歴史は人類はじまって以来のものとも言え、それは文明によって失われた自然にふたたび戻ろうとする衝動であり、芸術の起原であるのだと。

そして、★先生が幼いころ、疎開先の山形ではじめて手にした絵本~アーティストの叔父の創作によるもの~の記憶から、絵というものへの何ともいえない切なさ、紙の質感や匂い、味など五感を刺激する、オブジェとしての絵本の本質に迫ります。

さらに、作者がおらず自然発生的にうまれたメルヘン、おとぎ話がペローによって再話されたこと、アリエスが明らかにしたように「子供」の概念は17世紀以後生まれたことなどを詳細にたどり、近代的な意味での絵本の起源を語ります。
バンドデシネやカリカチュア、紙芝居、ランボーも好んだエピナール版画、ステンドグラスなど民衆的な起源も指摘します。かつて子供が小型の大人だったように、大人もまた大型の子供だったのだから、民衆版画がこどもっぽいのも頷けると!

そして実際に、今回展示もされている絵本のかずかずを映写しながら、絵本の驚くべき世界を解説・展開してくださいました。
エピナール版画の紋切り型に見られる「共通の場所」、博物学、旅、エグゾティスム、インファンテリズム、風刺画的な毒、シャルル・フーリエ、恐怖と魅惑の森、無限に展開するもじゃもじゃペーター、妖精世界の系譜、シンボリズムの世界、アニミスム、地域的な展開、アール・デコ、アール・ヌーヴォー、アニメーションの感覚、オブジェの感覚、シュルレアリスムの感覚・・・。

絵本の魅力を、これほどながい歴史のなかから深く、そして無限の視点から語られた、本当に画期的なご講演でした。人類の本質に迫り、「共通の場所」へとアナロジックにつながっていきます!

 

(okj)