巖谷國士★トークショー「写真・オブジェ・驚異」@スパンアートギャラリー

今回もまた、驚異と感動を呼んでいる★先生・桑原先生の展覧会。今日は★先生によるトークショーが開催され、ギャラリーいっぱいに観客が詰めかけ、ひときわ盛りあがりました!

今回の写真展のテーマは「驚異の部屋・驚異の旅」です。驚異……ラテン語ではミラビリア。マニエリスムがあらわれたのと機を一にすると★先生、その16世紀という「世界不安」の時代の状況と美意識、地理上の発見や体内の発見(解剖学)について示し、驚異の部屋が誕生したことをお話します。それが18世紀、近代科学によって分類化・情報化されて不思議が奪われ、驚異の部屋が滅びた過程、さらには20世紀に、シュルレアリスムによって復活した過程を語られます。

そしてミラビリアは★先生の写真と大きな関係があることが明かされるのです。ミラビリアの「ミラ」は、「見る」ということ。《扉の国のチコ》のチコのように、生まれつき目が悪かった★先生は、ものの見方を教育され画一化されることに抵抗感があったといいます。
カメラのレンズという機械の目は、教育された人間の目が「現実」をなにかしら意味づけて見るのとちがって、意味も用途もないオブジェとして見ることができます。ファインダーを片目でのぞき、無限にある時間と空間のなかからそのただ一点を撃つとき、そこに超現実……新しい現実、不思議な現実が見えると★先生。そこにはもはや意味内容はなくなり、さまざまな意味作用が浮遊しだすのです。


3次元の世界を、2次元のフレームのなかへ切りとり、ズームで遠くのものを近くに引きよせることもできる。フォトグラフィーを正しく訳せば「光の絵」だと★先生がおっしゃるとおり、★先生の写真は決して行ったところの説明でも、「現実」そのままでもないのです。彫像を撮ればまるで生きている人間のようになり、逆に人間を撮ると人形や彫像のように見える……瞬間瞬間、オブジェや光や色を撃つ★先生の目!骸骨などの「メメント・モリ(死を想え)」ですら、★先生が撮れば「生を想え」とばかりに動きだす……進撃すらはじめる……!

今回の作品一点一点についても語ってくださり、わたしたちはいっそう感動に震えたのでした!(okj)