巖谷國士★記念講演「澁澤龍彦-小説の旅」@しいのき迎賓館(泉鏡花記念館主催)

「澁澤龍彦―小説の旅」…泉鏡花ゆかりの地、金沢で★先生が講演を行いました!


巖谷小波と泉鏡花、巖谷小波と澁澤栄一、それぞれのかかわりを明かし、1963年に★先生が15歳年上の澁澤さんとはじめて出会ったとき、一瞬で通じてしまったことを話してくださいます。


60年代には、「異端」や「密室」など世間と交わらないようなイメージを持たれた澁澤さんですが、その背景に家族の病気や10年にわたるサド裁判の法廷闘争を抱えていたこと、「異端」とは現代の神=テクノロジー、及びそのテクノロジーに身を捧げてしまった芸術家に対する異端だったことを語る★先生。そして万博以後の70年代、ヨーロッパへの旅をきっかけとして澁澤さんの変化していった過程をお話します。


60年代のオカルト的なイメージにはうんざりで、小説でも書くしかない……と堀内誠一さんへの手紙にも綴っていた澁澤さん。そして書いた『唐草物語』が泉鏡花賞を受賞したのでした。独創性という近代の悪弊を免れようとしていて、書くものすべてにもとがあるのです。小波・栄二の巖谷家父子による『大語園』を愛していたのも運命といえましょう!

澁澤さんの最初の小説は『犬狼都市』だと思われていますが、実は澁澤さんが初めて小説を書いたのは25,6歳のときで『撲滅の賦』と『エピクロスの肋骨』であったことを指摘する★先生。★先生の読みによって、ここにすでに、澁澤さん最後の小説『高丘親王航海記』のラストシーンがあらわれていることが明らかになるのです……!魚、鳥、木琴に変身するコマスケ、dry bones……生涯のモチーフが円環をなして形成される物語。

『唐草物語』の最初に入っている「鳥と少女」についてもくわしく語ってくださり(折鶴とウッチェッロ……!)、澁澤さんの自画像ともいえるウッチェッロと、澁澤さんにとっての女性像の原型ともいえる野生の少女・セルヴァッジャが、ついに最後の長編小説へとつながっていきます。アナクロニズムとともに、もはや澁澤さん自身と区別のついていない高丘親王、生涯つきまとう女性たち……薬子、秋丸・春丸、パタリヤ・パタタ姫、カリョービンガ…… 骨というオブジェになった高丘親王、そして終わる澁澤さんの小説の旅。
 
入れ子状に主人公と自分が合体していき、円環をなして生涯がアナロジックに構成される……自然発生的に人生が書かれ、しかも偶然をきっかけとして死にゆく……こうしてみると澁澤さんの生涯が旅であったことがわかると語る★先生。生涯を通して作家を見る★先生、この圧倒的な読みを前に、わたしたちはただただ感動に呑みこまれて、茫然としてしまいました。会場には涙する人も。いままで誰も語ることのなかった、おどろくべき読みでした……!(okj)