巖谷國士★特別講演「昭和文学とダダ・シュルレアリスム」@昭和文学会 春季大会


砧撮影所が近くにある会場で行われた昭和文学会。★先生の講演「昭和文学とダダ・シュルレアリスム」は、すばらしいライヴでした!

この学会で特集されたフロイトの理論Unheimlichをわかりやすく解説してくださいながら、それがシュルレアリスムのdépaysementとは似ているようで、まったくの正反対であることが明らかになっていく過程の解放感といったら!

 

フロイトの説は、19世紀的なとらえかたで、保守的で、「去勢不安」などと女性を除外していると批判する★先生。フロイトは安定・安楽・安心をよしとして、それを切り崩すものに「不気味」(=抑圧されていたものがあらわになること)を感じます。

が、シュルレアリスムのdépaysementは、安定・安心だ~とされる与えられた現実を疑い、本当の現実がもっとすばらしいものだということを発見し、解放へと向かうのです!


1920年代と1960年代をつなごうとする学会の企画に、★先生は歴史をおって当然それを現在までつなげ、戦争後と震災後に共通する「危機」を指摘されます。

戦争の現実と不可分のダダは、第一次世界大戦中、参戦した国々でも同時多発的に発生し、ある意味、20世紀文明に遍在しうるものだとも。


同大戦後にはシュルレアリスムが発生しますが、ダダもシュルレアリスムも日本においては様式化し、形式的流行が見られました。これに抵抗する、関東大震災後の瀧口修造の活動から60年代アンデパンダン〜千円札裁判にいたるまでの活動を話され、また第二次大戦前・中の花田清輝の抵抗、戦前・戦後の瀧口修造の花田清輝への目配せ、ネオ・ダダや60年代シュルレアリスムへの鼓舞・援護にまで話は展開してゆきました。

最後に、60年代が1920年代に似ているという学会の問題提起に対して、むしろ東日本大震災後の現在こそ、関東大震災から治安維持法、日中戦争へとむかった1920年代によく似ていると、きっぱり発言されました。
 
日本におけるネオダダの時代の様子、活動、ウルトラマンのダダ星人やブルトン星人の誕生に見られる、あの時代の精神。大阪万博で、人類の「進歩と調和」ではなく「原始と混沌」をやった岡本太郎(アイジャック事件にダダカンも登場!)……。


★先生の体験から語られる臨場感に興奮を抑えられません。瀧口さんと目くばせ関係にあった花田清輝についてもくわしく展開してくださり、彼の戦争への抵抗の様子、自画像的な書き方、予想外のものを併置する文体、エルンストやメルヘンの引用、などなど、★先生の読みには目からウロコです!

1960年代からダダ・シュルレアリスムの推進者だった★先生のさまざまなご著書もまた「昭和文学」であり、時代をつうじてすべてを見て察知してきた★先生だからこそ可能となった今回の講演。三人の個別の発表を聴いたうえで、即興で、それらすべてをつなげて批評的にとらえなおし、広い視野と多様な見方をプレゼントするというすばらしい超ライヴ!

その★先生が現在進行形で、花と木のシュルレアリスムという新たな領域を創造していることに、ますます感動してしまう……そんな一日となりました。(okj)

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コメント: 1
  • #1

    野本 聡 (金曜日, 01 8月 2014 13:54)

    遅ればせながら…。発表させていただいた野本聡です。
    当日は巌谷先生に大変お世話になり、有意義なご教示をいただきました。
    感謝申し上げます。
    今後ともよろしくお願い申し上げます。