巖谷國士★講演「シュルレアリスムとメキシコ」@京都産業大学

「シュルレアリスムとメキシコ」@京都産業大学

 

11月8日(金)、京都産業大学で、巖谷國士講演「シュルレアリスムとメキシコ」がおこなわれました。16時50分から19時すぎまで、とてつもなくスケールの大きい講演になりました。

 

講演の前にメヒコ(メキシコの本来の名)の地図とメヒコ/シュルレアリスム関係の人名録(メヒコの革命家や芸術家、トロツキー周辺、シュルレアリストたち、ほかの芸術家たち、写真家や映画人たちまで、58名!)が配られ、期待がつのります。

夏にKさんとメヒコ旅行をしたはせがわさんの現地写真と、アーティストたちの絵画、写真の映写をはさんで、2時間以上!

★先生のお話は、アルトーにつづいてブルトンがメヒコと出会った1938年、つまり彼がメヒコに降り立ったときからはじまりました。

 

ヨーロッパや日本でファシズムが台頭し、世界中に不穏な空気が蔓延していた当時……唯一、亡命者を積極的に受けいれる寛容さを示していたメヒコに、ブルトンは「人々の心がひらかれるところ」を見いだして、はじめて出かけたのです。

 

★先生は、ブルトンが以前から思いえがいていた(冒険小説、アンリ・ルソー!)、そしてついに体験した(トロツキー、リベラ、フリーダ・カーロだけでなく、ポサダからアルバレス・ブラボまで、サパタやビリャ、そして自然・風土、古代文明、カラベラ=骸骨、オブジェの不思議まで!)をつぎつぎと開示しながら、次第に、この土地に生きる人々とその歴史、生活、死生観にまで話をひろげ、近代メヒコが混淆と変化をおそれない気高い人格を形成していった過程を解きあかしてくださいました。

ヌエバ・エスパーニャ(新スペイン)~メヒコ合州国と呼ばれるよりもはるか以前から、ここにはたくさんの古代都市が栄え、魅惑的な名を持ち、旧大陸とは違う自然と生活と信仰を育てていました。(あらゆる神話的な名詞が★先生の口から溢れますが、いちいち記していたら私の報告はおわらないでしょう。)

 

その文明も、16世紀にヨーロッパからの侵略者コルテスによって破壊されてしまいます。(私はコルテスを湖上の夢の都に迎えいれたテノティチトランの民を尊びたい!)でも、侵略・征服されたインディオは、ヨーロッパ人と混血しながら、アステカやマヤの血を絶やさずに、やがて雄々しい革命家たちを生み育てます。

 

時をへて、ロシアにも先立つ独自の革命をなしとげたこの系譜が、自由と解放の旅を選んだシュルレアリスムに受けつがれたことは、★先生の示すさまざまな事実資料や、なかでもパンチョ・ビリャを描いたマルセイユのトランプ(!)の画像からも明らかでした。

一方、メヒコの芸術に与えたシュルレアリスムの衝撃も大きかった。革命後の壁画運動や野外美術学校の運動から、1930年代にいたってシュルレアリスムとの出会いから開花するメヒコの美術はすばらしいものです。とくに写真家や、女性アーティストたち。ヨーロッパから来てそのままメヒコに居残った芸術家も女性のほうが多かったように思えます。

 

★先生のつくられた20世紀メヒコ/シュルレアリスム人名録には、革命家やカルデナスのような政治家、思想家も含まれ、作家たち(パスだけでなく、マンディアルグやル・クレジオ)、さらに日本の芸術家(北川民次などにとどまらず岡本太郎まで―とくに《明日の神話》の新解釈!)、映画監督(ブニュエル、ホドロフスキーからカザン、ペキンパまで!)、俳優たち(シルビア・ピナルだけでなくアンソニー・クイン、三船敏郎!)へと、どんどんひろがっていきます。

 

とうていすべてを報告できないスケールの講演でしたので、私のレポートもここで途切れます。

★先生のお話で私の頭も想像力もフル回転、まだ行ったことのないメヒコについて、ただただ大きな超現実的な、夢と憧れをいだくことになりました。

(trois)

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コメント: 1
  • #1

    sek stel (土曜日, 04 11月 2017 00:50)

    Wilson