巖谷國士×シュルレアリスム展@国立新美術館

423()、国立新美術館にて★先生のシュルレアリスム講演が開催されました。
このたびの大震災であらわになった自然。この自然というところからシュルレアリスムにアプローチし、偶然・オブジェ・共通の場所というものがあきらかになっていく驚きの講演でした。
宇宙のはじまりのビックバンも、突然変異による生物の進化も、自然の運動は本来的に偶然なもの。そしてドングリや石や木やへんてこな動物など、自然界にあるものは意味も役割も機能も与えられていないオブジェとして存在しています。

シュルレアリスム展の会場の作品たちには、印象派のような様式の共通項はありません。シュルレアリスムは定義でも原理でも流派でも様式でもなく、すべてが体験です!オブジェが浮遊し、自然・偶然の世界が展開し、そして共通の場所がつくられています。たとえばキリコの町のように、抽象画とはちがって描かれているのは具体的な場所であり空間であり、しかしその空間は個人の密室でも特定の場所でもなく普遍的な共通の場所です。

『シュルレアリスムと絵画』からブルトンのことば、「目は野生の状態で存在する」が紹介され、われわれの中に野生があること、偶然を察知し共通の場所をつくる目があること、すばらしい絵にはそのなかに入っていきたくなるような愛があることを知りました。

さらに、野生(ソヴァージュ)の語源はラテン語のシルヴァ=森の民。ローマの森から近代の森まで話がおよび、芸術を通じて人間がはるか昔からどう自然とつきあってきたかを見る、東京都庭園美術館で開催中の「森と芸術展」につながり一体となるものすごい講演でした。

おまけに、展覧会のなかから★先生がこれは!と思う作品たちを年代順に紹介してくださり、どんな変化があったのか、どんな共通の場所があったのかを見せてくださいました。★先生の視点のあまりのおもしろさ・切なさに爆笑したり胸がきゅううとしたり。会場が共通の体験につつまれ、共通の場所となりました。 (okj)